2014年7月13日日曜日

映画「マレフィセント」の角セルフィがタレント中心に話題。


ウォルト・ディズニー創立90周年記念作品である映画『マレフィセント』。ディズニー・クラシック・アニメーションの傑作『眠れる森の美女』の誰も知らない“本当の物語”と、その真実に隠された“究極の愛”ドラマティックに描き出す、アンジェリーナ・ジョリー主演最新作

7/5(土)に公開を迎え、初週の週末興行成績は6.91億円を記録。それまで16週連続不動の1位だった『アナと雪の女王』を抜き、興行収入1位の好スタートを切りました。公開3週目の土日(19、20日)時点で興行収入は30億を突破、最終興収も50億を超えて来る見込みです。

「アナと雪の女王」の歴史的大ヒットを振り返る。(前編)で述べた通り、洋画の興行収入が20億で大当たりの今のマーケットで、非常に大きな興行となることが予想されます。(洋画で50億越えとなれば、2012年『レ・ミゼラブル』以来のビッグヒット。)


そんな今作の宣伝がユニークだと、業界内でちょっとした話題となっています。どんな感じかというと、こんな感じ。



















正確にはセルフィでは無いものも多いですが、こんな著名人の角付ショットが、映画の公開前よりソーシャルメディア上に数多く投稿され、話題となりました。原因はこれです。



映画『マレフィセント』の角入りプレスキット。



ある日突然、ウォルト・ディズニー・スタジオから、タレント・モデル・マスコミ各位にマレフィセントBOXが届きます。かなり大きいです。(家庭用ゲーム機の箱ほどでしょうか)

訳も分からないまま箱を開けると、中には上質なプレスが入っており、さらに中蓋を開けると・・・



中にはマレフィセントの角(カチューシャ)が入っています。何の予告も無くサプライズでこれが届けられるあたり、ちょっとしたビックリ箱です。






届いた人は、とりあえず頭に装着し、その姿を写真を撮ります。

この角入りプレスキットが嬉しいサプライズとなり、「どんな映画なんだろう」と、ディズニーが関係者向けに行う試写会に毎回応募が殺到し、影響力の強いタレント・マスコミの、その後のポジティブな口コミに繋がりました。




こうしたセルフィを促すプロモーションツールを配布するアイディアは海外事例などでたまに見られますが、どうしても“画面(えづら)だけの面白さ”に始終してしまうことが殆どです。

しかし、今回の「マレフィセント」の取り組みは、“試写”に誘導することで映画の側(キャラクタービジュアル)だけでなく、物語や見所といった作品の中身をインフルエンサーから落とすことに成功しています。

なにより、殆どの配給会社が映画のプレス発送にここまで手の込んだことはしない中で、この施策はディズニー社が今作にいかに力を入れているかを伝えるメッセージとなりました。

また、こうした顔出し写真の投稿を促進するようなアイディアは、シャイな日本人だと今イチ反応が悪く成功しないものですが、タレントやマスコミ関係者という“そのあたりに抵抗感の無い人”をターゲットとしているあたりも、上手く考えられている事例ではないでしょうか。




2014年5月5日月曜日

「アナと雪の女王」の歴史的大ヒットを振り返る。(後編)

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

前回に続いて「アナと雪の女王」について。映画宣伝に関わる者として、観察を続けてきた今作の大ヒットを考察したいと思います。

GWの大型動員によって、興行収入も150億に限りなく近づき、とどまる事無く記録を伸ばす「アナと雪の女王」。日本におけるその成功要因は、作品の純粋なポテンシャルが5運が2.5宣伝努力が2.5というのが僕の心象です。

ピクサー・アニメーション・スタジオのCCOであり、その他ディズニー内2つのスタジオも統括するジョン・ラセターが「20年に1度の傑作ができた」と太鼓判を押し、脚本・映像・音楽・演出・キャスト、あらゆる方面で高い評価を受ける今作。

この作品がコンテンツとして、いかに素晴らしいか〜みたいな話を掘り下げてもいいのですが、ブログの趣旨上「アナと雪の女王」はどのように鑑賞意欲を高める空気づくりを行ったのか〜という、より宣伝的なアプローチに注目したいと思います。

アナ雪の数ある魅力の中で、あれこれ理由を考えず、動物的に反応する部分。人の心を捉えてやまないのは、間違いなく“音楽の力”であり、宣伝において何よりもワークしたのもこの部分です。すべてはこの魅力に紐づく形で、アナ雪の宣伝は計画されています。


●主題歌“Let It go”による「話題の見える化」と「エンゲージメント」

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

これは映画宣伝に限った話ではありませんが、広告主体には、半ば制約にも似た「伝えなければならないこと」とがあります。

映画の「伝えなければならないこと」と言えば、公開日や物語や世界感、設定、キャスト、登場人物のキャラクター等。比較的、真面目でロジカルなコミュニケーションと言えるでしょう。

しかし、このコミュニケーションだけで作品に興味を持ち、映画館まで足を運ぶ層は、極々少数です。

Wヒロインだから?
キャラクターが可愛いから?
描かれているのが真実の愛だから?

いずれも作品が評価されているポイントではありますが、ここだけの押しでは、ディズニーコアファンを中心とした、狭い層の鑑賞意欲しか引き上げるのは難しいでしょう。

前回のブログで説明した通り、20億前後が洋画としてのアッパーであるこの市場。映画という枠を超えるには、ストーリーをロジカルに伝えるだけではなく、それをベースとしながら「なんか分かんないけど面白そう」という外側の人々の気持ちを作り出す必要があります。そのムード(話題)づくりにおいて、Let it goは絶大にワークしました。


  イディナ・メンゼル版「本家:Let it go」



5月頭現在、youtubeで2億再生を超える4分間のミュージッククリップ。日本の宣伝が本格的に立ち上がった昨年12月頃から、通常の予告編では無く、この映像(楽曲)に地上波で、デジタル上で、とにかく触れて話題にしてもらえるよう、アナ雪のコミュニケーションは設計されていました。


25カ国の吹替キャストが歌う「25カ国語ver. Let it go」



日本版主題歌「Let it go 〜ありのままで〜(May J)」



日本版「Let it go〜ありのままで〜(松たか子)」



ご覧のように「Let It go」には複数のパターンが存在し、これらの一つ一つは「●●版Let it go公開」というニュースで打ち出され、作品の音楽性がきちんと“世の中ゴト化”されるよう、継続的なコミュニケーションが図られました。

また、アメリカでの公開が2013年11月と日本より早く、日本の宣伝タイミングでは本国ですっかりお祭り状態となっていたことから、数多くのパロディ動画がYoutubeに投稿されていました。これも日本における宣伝では大きな追い風となり、「海外でこんなに話題になっている」というパッケージでニュースが打たれます。


11歳少女が歌う「let it go」がスゴ過ぎて3,600万再生突破!




一人21役!色々なディズニーキャラの声で「Let It Go」を歌ってみた




こうしたニュースを打ち続けることで、「アナと雪の女王=音楽」のインプットが世の中に蓄えられていきます。

また、この頃からNAVER等で「アナ雪のパロディ映像がこんなにあるらしい」というまとめが作られるなど、各種ニュースサイトでも勝手にアナ雪の音楽性が取りあげられるようになり、その情報量は増幅していきます。

音楽を通じた話題は「見える化」し易く、同時に聴き込み作用があります。そのため現象感を生み出しつつ、非常にエンゲージメントが高い状態で、アナ雪は日本公開を迎えることができた珍しい事例となります。(そういう意味で、この作品の魅力が音楽性にあったことは、宣伝上非常にツイていたと言えます。)



コンテンツが自走し始めるという、理想的な状態が公開直前には出来上がっていました。

そして、宣伝後期には、こうしたニュース出しと平行して音楽を立たせたTV-SPOTも開発され、公開直前には大量のTVCMに多くの人々が接触することになります。

映画宣伝という限られたスケジュールの中で、理想的とも言える“話題の積み上げ”が「アナと雪の女王」ではできていました。


●映画「アナと雪の女王」にまつわるお墨付き

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

こと日本人に関して消費は、チャレンジングなものではありません。生活者は保守的で、映画を認知していた所で、観たいという気持ちが多少あった所で、最終的に「コレだ!」という間違いないもの(間違いない期待)にしか、投資をしません。

日本の映画市場において、シリーズものや原作もの等、フランチャイズ作品しか最近は大きく数字を伸ばしてません。

それ故に、広告コミュニケーションでは「これは大丈夫!」「これなら間違いない!」という〈保証=お墨付き〉をいかにつくるかが非常に重要となります。僕は、この〈保証=お墨付き〉を、トライバルメディアハウスの池田紀行さんのお考え等も参考にしながら、以下の2つに整理して考えています。

①『自分ゴト化された保証(間違いない感)』
②『仲間ゴト化〜世の中ゴト化された保証(間違いない感)』



配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/


①『自分ゴト化された保証(間違いない感)』
前者はターゲットの特定の体験・経験に帰属した間違いない感です。

・お気に入りの監督・制作スタジオが作る映画だから〜
・好きなキャストが出る映画だから〜
・原作本が面白くて、その映画化だから〜
・映画もドラマで面白くて、その映画化だから〜
・アニメが面白くて、その映画化だから〜
・前作が面白くて、その続編だから〜

事前に「間違いない!」と思ってもらうために、広告コミュニケーションでは上記のようなキーワードを打ち出し、「確かにあれは間違いないかった〜」というターゲットの記憶を引き出します。

映画公開直前に、シリーズ作品の前作や関連作品を地上波でOA.するのも、大きくはこれに分類されます。アナ雪も公開時にも、ラプンツェルが地上波OA.されましたね。そしてアナ雪の場合、以下のようなキーワードの打ち出しがありました。

・美女と野獣、ラプンツェルを超える〜
・アンデルセンの雪の女王を原題とした〜
・ディズニー創立90周年記念作品〜等

しかし、これで自分ゴト化された保証〈お墨付き〉を持てる人は、決して多くありません。基本的には新作で、フランチャイズの無いアナ雪は、ターゲットの過去の記憶や経験から、間違いない感を引き出すことが難しい作品でした。

そうした場合、“広告コミュニケーションを通じて、ターゲットに間違い無い体験をしてもらう”という発想があり、Let it go はここでも大きくワークしました。予告編では無く、劇中で最も心を捉える4分間の本編映像を事前に切り出し、それにとにかく触れて貰うというアプローチで、“アナ雪のジブンゴト化された間違いない感”は醸成されいったのです。

広告コミュニケーションを通じた“間違いない体験”には、様々な取り組みがあります。

・本編内、冒頭○分のフッテージ映像公開
・本編の前日譚の映像化や漫画化(コミカライズ)
・劇中サウンドトラックの視聴映像投稿
・映画を解説する番組(特番)作り
・制作秘話の暴露企画
・キャスト(映画キャラクター)の番組出演とトーク

作品に自信があり、権利上のしがらみなどが無ければ、コンテンツの先出しにより、“間違いない体験”を事前に作ってあげるのは、アプローチとして一番シンプルかもしれません。それ以外にも、基本的にこの領域は、ターゲットの経験価値を高めるコミュニケーションであれば、なんだっていいように思います。


配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/


②『仲間ゴト〜世の中ゴト化された保証(間違いない感)』
後者のこちらは、ターゲットの外部(友人や情報媒体)に帰属した間違いない感です。

・友達のアイツが言うから、この映画は間違いない。
・自分が憧れ、信頼をおくオピニオンリーダーが言うから、この映画は間違いない。
・いつも観ている番組やサイトで取りあげられたから、間違いない。
・「○○越え!」だから、この映画は間違いない。

アナ雪の仲間ゴト化された間違いない感は、公開前迄に、時間をかけて行われた Let it go 訴求が生み出したコンテンツの一人歩きによって、人々の間に十分良いムードが出来上がっていました。

“世の中ゴト化された間違いない感”という点では、ディズニー社は公開前に以下の強いキーワードをニュース出しすることに成功しています。

・ライオン・キングを越え、ディズニーアニメーション史上歴代No.1ヒット 作
・公開6週目成績で「タイタニック」「アバター」に次ぐ新記録樹立
・全世界歴代アニメーション作品No.1の快挙達成
・「風立ちぬ」を破り、アカデミー賞/長編アニメーション賞&主題歌賞 W受賞

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

連日、こうしたニュースがTVやWEBをかけめぐり、強力な“間違いない感”が世の中ゴト×仲間ゴト×自分ゴトとして醸成され、公開前から極めて良いムードを作ることができていました。

勿論、これらは作品としての強さがあって、初めて打ち出すことができたキーワードです。また、その背景には、全世界で最後の公開国が日本であり、宣伝期間中に次々に強い武器(言葉)が手に入った〜という幸運があります。

冒頭でも述べた通り、実力と運と宣伝努力。この3つがかけ合わさり、この歴史に残る大ヒットは生まれたと僕は考えます。

そんな中でも、「実力の高さ」と「持ち運」をしっかりと宣伝で活かし、最大化させるコミュニケーションをアナ雪からは学ぶことができます。

今では宣伝の手も離れ、作品が一人歩きし、どこまで成績を伸ばしていくのか読めない状況が続いています。一映画ファンとして、この動向は最後まで注目したいと思います。(そこに、また新しく学ぶことがあるかもしれませんからね。)

長文ご覧頂き、ありがとうございます。



2014年4月27日日曜日

「アナと雪の女王」の歴史的大ヒットを振り返る。(前編)

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

「アナと雪の女王」の快進撃がとまらない。興行収入は公開37日で100億円を突破し、ディズニー史上最速の記録を樹立。2014年4月23日時点で111億円を突破し、洋画アニメ史上最大のヒット作になっています。

これまでの日本の洋画アニメの記録は、2003年の『ファインディング・ニモ』の110億円。2014年3月14日(金)の公開以降、化物じみた興行が、今なお続いています。

最終興収もディズニー配給作品No.1の『アルマゲドン』(135億円・1998年)の突破は確実視され、『アバター』(156億円・2009年)超えの可能性も十分に見込めます。
GWにどこまで伸ばせるか〜次第でしょう。

映画に関わる人間の端くれとして、この作品の宣伝とヒットプロセスにはとても学びが多く、きちんと振り返りと内省をしたく、ブログ内で前後半に渡ってまとめたいと思います。

前半である今回は、アナ雪がどんなヒットをしているのかを、結果(興行成績)の部分から捉え後半はどんな風にそれが作られていったのか、宣伝の文脈で捉えていきたいと思います。


●そもそも興行収入100億ってどのくらい凄いの?

20億=すごい!
40億=かなりすごい!
60億=めちゃくちゃすごい!
80億=やばい!
100億=お祭り!


独断と偏見にまみれていますが、とってもざっくりに、こんなイメージではないでしょうか。


日本国内歴代洋画興行収入ランキング 1位 - 100位(映画ランキングドットコム引用)


まず、日本の映画業界自体が一昔前とは大きく異なり、洋画実写は20億超えれば大ヒットというのが、現在のマーケット感です。

最近の洋画実写で当たった作品と言えば、12年『レ・ミゼラブル』の61億、『テッド』の41億、13年『ゼロ・グラビティ』の31億などが記憶に新しい所。


音楽市場で100万枚というハードルがそれほど高くない時代があったように、映画も100億作突破品が年間で連発する時代がありました。けど、今は明らかに違います。

20億という数字は、一般成人の劇場に足を運ぶ回数が1.14回という日本において、マーケットの限界値に感じられます。


これ以上売り伸ばすには、通常映画に足を運ばない人達を取り込む必要があり、ある意味でその作品は、"映画を超えること”が求められます。

興収30億〜以上となれば、単純に見ても10億分(70万〜80万人動員)が、普段映画館に来ない客層を巻き込むことになります。

そうした普段映画館に行かない人達が劇場に流れはじめると、少しずつ、作品の社会現象化が始まります。簡単に書いてしまっていますが、数ある映画作品の中で、そこに至ることは容易くありません。

そんな市況の中で、新作洋画アニメの『アナと雪の女王』が大ヒットで生み出しているエネルギーは、歴史的に見ても明らかに異常な熱量といえます。

正直、僕なんかじゃ言葉にする表現が見つからないくらい、どえらいことが、今まさに起こっています。


配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

全世界興行収入では歴代6位にランクイン。14年の全世界的なトレンドとなっています。

【全世界歴代興行収入記録】
(※4月21日、BOX OFFICE MOJO調べ)

1位「アバター(27億8230万ドル)
2位「タイタニック(21億8540万ドル)
3位「アベンジャーズ(15億1180万ドル)
4位「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2(13億4150万ドル)
5位「アイアンマン3(12億1543万ドル)
6位「アナと雪の女王」(11億2917万ドル)
7位「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン(11億2370万ドル)
8位「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(11億1990万ドル)
9位「007 スカイフォール(11億860万ドル)
10位「ダークナイト ライジング(10億8440万ドル)



●37日で100億ってどれくらい早いの??


配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

タイタニック』80日、『アバター』50日、『アリス・イン・ワンダーランド』38日間、『ファインディング・ニモ』44日という中でアナ雪のそれは、歴代100億作品の中でもかなりのハイペースです。

劇場としては当然、新作が次々封切られる中で、いつまでも人が入らない作品を、自分達の箱でかけておくわけにはいきません。通常は、どんどん新作に差し替えてしまいます。

アナ雪の恐ろしい所は、公開以来、土日に稼ぐ興行収入が、全くと言っていいほど落ちない所にあります。


1週目(金土日)9億8000万
2週目(土日)8億7226万9400円
3週目(土日)8億8100万円
4週目(土日)8億5091万1950円
5週目(土日)8億4025万8550円
6週目(土日)8億2678万1000円(04.27時点)


ちょっと、見た事が無い興行です(笑)

作品のポテンシャルやヒットの仕方、公開タイミング(春休み/GW/夏休み)等にもよるため、一概には言えませんが、公開土日に4億かせげば、それは素晴らしい成績です。20億を狙える数字と言えるでしょう。

10億目標作品で、公開土日2億など行けば、こちらもまた十分、それを狙える数字です。
40億〜を狙う作品となると、公開土日で6億は行かないと、辛い感じでしょうか。(※これら、あくまで僕の私見に基づくものです)

アナ雪は1日あたり2.7億ずつ売り上げる計算となりますから、本当に恐ろしい大ヒットです。


配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

アナ雪の37日100億というスピード突破には、この”興行の落ちなさ”が、大きなポイントになっています。

アナ雪は公開1ヶ月弱という非常に短い期間の中で、リピート鑑賞をしている人が多く、
さらにはそのリピーターを生成し続けています。字幕と日本語で見る〜という複数回鑑賞者が、この作品に関しては非常に多く存在します。

公開1週目に映画を見た鑑賞者が、2週目にリピーター(A)となり、さらに2週目には話題の映画〜と聞き込んで巻き込まれた層が加わり、その新規層の一部が3週目にはリピーター(B)となる。

また、最初のリピーター(A)も、その中のコアな人達は、3、4回と更にリピートする。

こうした雪だるま式の落ちない興行が、ぐるんぐるんと回り続けていることが、今のアナ雪ヒットに予測できます。

また観たくても満席で空きがない、2、3週かかってようやく観れた〜という声も多く、
この辺りも持続的な興行を意図せず作っているでしょう。

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

新作として公開し、まだ1ヶ月少しか走っていないにも関わらず、接触した人間を次々と虜にし、ファンを生成し続けているという、恐ろしい引きの強さを見せつけているのが『アナと雪の女王』です。

また120億、130億越えのニュースが、1週間毎に世の中を走って行くことだと思います。

後半の次回は、この大ヒットにどうやってたどり着いたのか、より宣伝的なアプローチについて、まとめてみたいと思います。(そっちのが、ブログの内容的には本編となります)

2014年3月16日日曜日

【只の独断と偏見】これは引き込まれる、映画のオープニング集

皆さん“好きな映画”って其々あると思いますが、この映画のオープニングがたまらんって作品はありますか??



ハリウッドでは映画のオープニング作る専門職があって、タイトル・デザイナーと呼ばれてます。

映画自体、様々なエキスパートが集結して、一個の作品が作られるわけですが、そのオープニングの演出で作品に引き込まれるか否かは、僕自身の鑑賞満足度が作られる上で、結構重要だったりします。

映画の世界に誘うオープニングが、その作品のセンスを色濃く反映していることもあれば、作品の核心に迫る伏線が演出が張りめぐらされていたり。逆に始まりだけ格好良くて、中身で失速する作品も多々あるかと思います。

そんな、以外と奥深い映画のオープニングの世界で、個人的に心惹かれた映像のいくつを、今回はご紹介します。


●「アイアンマン3」(2013)OP



初見のとき、ニヤニヤが止まりませんでした。シンプル・イズ・ベスト、めちゃくちゃカッコイイです。

アイアンマンという作品カラー・ヒーロー像・主人公トニー=スタークのキャラクターが、【MARVELスタジオ→パラマウントのロゴ】の30秒弱に濃縮されています。

このオープニングから、今作の敵ボスとトニー=スタークの因縁に迫る回想シーンへと続きます。「アイアンマン3」はエンドクレジットもめちゃくちゃ格好良く、マーベル作品の中でも別格のセンスの良さを感じます。


●「007 スカイフォール」(2012)OP

 

これまで数多くの名オープニングを生み出して来た007シリーズの最新作「007 スカイフォール」。ジェームズ・ボンド役は、この作品で3度目となるダニエル・クレイグが演じています。

映画はシリアスなアクション・シーンから始まり、主人公のジェームス・ボンドが仲間の誤射で被弾、列車の屋根の上から90m下の川へと転落。まさかのボンド死亡というショッキングな展開から始まります。

2012年に50周年を迎えた007シリーズは、歴代のオープニング映像だけを集めたムービークリップも多く存在し、毎回その高いクオリティで話題を呼びます。間違いなく、007シリーズの見所の一つと言っていいでしょう。


●「ワールド・ウォーZ」(2013)OP



ブラッド・ピット主演の、終末ホラームービー。謎の疫病が世界各地で流行し、次々と生物が凶暴化していく所から、映画は始まります。

画面(画角)の切り取り方が、タイトルになっている所がお洒落で、音楽にも物悲しさと緊張感があって素敵です。わずか2分ほどですが、観る人を物語のスタート地点に立たせてくれる映像ではないでしょうか。


●「ウォッチメン」(2009)OP



『300 (スリーハンドレッド)』等を手掛けるザック・スナイダー監督のアメコミ原作映画。

ケネディ暗殺・ベトナム戦争・キューバ危機・アポロ計画の月面着陸。数々の歴史的事件の裏に必ず存在した、全ての真実に関わる「ウオッチメン」というヒーロー集団。

6分と長いオープニングですが、かつて「ミニッツメン」という犯罪者と闘うコスプレヒーローが存在したこと。メンバーたちは病院送りになったり、引退したり、報復されたりで消えていったこと。

時が経ち、第二世代のヒーローたちが集結し「ウォッチメン」を結成されたたこと。彼らは政治や戦争など数々の歴史的事件に関与していること。

「ウォッチメン」を見るうえで必要不可欠な情報が、ボブ・ディランの「時代は変わる」とともに哀愁たっぷりに流れていきます。歴史的事件にかかわったヒーローが次々と殺され、世界を揺るがす壮大な陰謀に巻き込まれて行くという、意外(?)にもシリアスな内容です。


●「最強のふたり」(2011)OP



「最強のふたり」は、不慮の事故で全身麻痺になってしまった大富豪のフィリップと、スラム出身の黒人青年ドリスの年齢・人種を越えた友情を描いた、実話を基にしたヒューマン・コメディー。

フィリップの介護人であるドリスは、彼を乗せた車で深夜の道路を駆け抜け、ある場所を目指します。

このオープニングは、映画のクライマックスに直接つながるシーンとなっており、映画を観終わった後にもう1度このシーンを観ると、二人の友情がしっかりと描写されているのが分かり、ピアノの音色と相まって、心にぐっとくるものがあります。

フランスでは歴代観客動員数で3位(フランス映画のみの歴代観客動員数では2位)となる大ヒット作であり、日本でも興行収入が16億円を超え、フランス語映画の中で歴代1位のヒット作となっています。


※以下番外編)エンディング
素晴らしい作品を観たあとに、どれだけ良い余韻に浸れるか。鑑賞満足度の形成という点では、オープニングだけでなく、エンディングの演出も非常に重要です。最後に、心惹かれた映画のエンディング映像を2つほどご紹介致します。


●「シュガーラッシュ」(2013)ED



ディズニーが手掛ける、ゲームの世界を舞台にしたCGアニメーション作品。「wreck it ralph 」という架空のゲームで悪役を務める主人公ラルフ。ヒーローに憧れ、自分のゲームから抜け出し、レースゲーム「シュガーラッシュ」の世界に入り込んだことから、ゲームの世界そのものの命運をかけた大事件が発生してしまいます。

本編中には「マリオ」シリーズのクッパや、「ストリートファイター」シリーズのザンギエフやベガ等、人気ゲームのキャラクターたちも次々登場し、徹底的なリアリティの下、こだわり抜かれて映画は作られています。

エンドクレジットも、ドット画を基調に、ゲームファンなら思わずニヤリとする演出があちこちに散りばめられています。

(※これは余談ですが、作中、ラルフをはじめクッパやザンギエフら敵キャラだけ集まるセラピーが開催されるのですが、その1シーンを巡って映画の制作陣と任天堂の間では「クッパはコーヒーの入った紙コップを三本指で持つかどうか」という話で、制作が一時中断したとか。)


●「アイアンマン3」(2013)ED



最初にご紹介した「アイアンマン3」のエンドクレジットです。戦いを終えたトニー・スタークの「I am IRONMAN」の言葉が格好よすぎます。

今回は割と最近の作品をご紹介しましたが、歴史を紐解くと、より多くの素晴らしいOP(ED)演出の作品があります。それらもまた機会があれば、ご紹介したいと思います。

最後までご覧頂き、ありがとうございました。

2013年9月21日土曜日

【事例】ターゲットの気持ちを“アゲる”!!ユニークな映画プロモーション3選



皆さんは、映画をご覧になりますでしょうか。また、どれくらいの頻度で、気になる新作映画を観るため、劇場まで足を運ぶのでしょうか。近年のデータでは、成人が1年間のうちに劇場を訪れる回数は、“1.14回”なんて言われています。

多いか、少ないか。感覚は人それぞれだと思います。この貴重な1回の鑑賞機会を獲得するために、或は、鑑賞機会そのものを増やす為に、作品の魅力をどのように伝え、生活者の心をどのように涌かせたらいいのか。配給会社、専門の宣伝会社、劇場、そして僕たち広告会社のスタッフは、日々熱い議論を交わし、悩んでいます。

今回は、そんな悩みをブレークスルーする、ユニークな映画のプロモーションの事例を3つほど紹介したいと思います。




『ライフ・オブ・パイ』
映画の世界観を身体全体で体験する水上試写会



日本での最終興収も19億円を超えるヒット作となった、映画「ライフ・オブ・パイ(2012年公開)」のフランスでの試写会はとてもユニークなものでした。

なんとその試写会は、作品の舞台が「小さなボートの上」ということで、それにちなんだ会場としてプールを貸し切り、水上に小さなボートを並べ、そこを観客席としてしまったのです。






一目見て分かるように、映画の世界を、目と耳だけでなく【身体全体】で体験してもらう演出です。上映中の約2時間は背もたれもなく、微妙に揺れる、決して居心地が良いとは言えない“座席”でしたが、参加者は皆大満足したとのこと。




身体性を伴う体験は、身体に強く、深く刻まれます。少年パイと限りなく同じシチュエーションを疑似体験してもらうことで、その経験価値は通常の映画鑑賞の何倍も引き上げられ、招待客もより作品を「ジブンゴト化」してくれたのではないでしょうか。

『ライフ・オブ・パイ』自体、かなり強く【3D】を意識した視覚表現が盛り込まれているので、その文脈から見ても、こうしたアトラクションタイプの試写は、まさにドンピシャと言えます。

奇抜さやニュース性だけでなく、鑑賞の経験価値を引き上げるこの試写会は、メディアや招待者のポジティブなレビューや口コミに繋がったことでしょう。こんな試写会があれば、例え作品に関心が無かったとしても、ついつい参加してみたくなっちゃいますね。



『モンスターズ・ユニバーシティ』
心躍るマジック・プロモーション


日本では7月6日に公開されているディズニー・ピクサー最新作「モンスターズ・ユニバーシティ」。公開2日で興収8.5億円、ピクサー史歴代3位の滑り出しを見せ、2013年9月現在で興収80億円を超えています。

この「モンスターズ・ユニバーシティ」のプロモーションで、ブラジルの子供たちの心を掴んで離さなかった事例を紹介します。




モンスターズシリーズの世界で、モンスター達が憧れてやまない職業が『怖がらせ屋』です。子供が最も怖がるものの一つに「暗闇」があります。そんな暗闇を、ちょっとした仕掛けで楽しんでもらおうと考案されたこのプロモーションでは、「モンスターズ・ユニバーシティ」のキャラクター型にくりぬかれた特注のシールが制作されました。




これらのシールは、車のヘッドライトに貼り付けることができ、ドライバーが車のライトをつけた瞬間、目の前の暗闇には魔法のようにキャラクターが浮かび上がるという仕掛けになっています。



ファミリー映画故に、劇場などを備えた大型商業施設などでサンプリングすれば、非常に高い効果を発揮します。或は、お父さんをターゲットに新聞の折り込み広告などにしても良いかもしれません。映し出された影を見た子供が、「映画を見たい!映画館に連れて行って!」とせがむ絵が目に浮かびますね。シンプルで子供が喜びそうな、素敵なアイディアです。



『ローン・レンジャー』
コスプレ取材陣を集めたジャパンプレミア



最終的にチケットを購入し、映画を鑑賞する一般生活者は「お客様」であり、その気持ちをアゲるのが、プロモーションにおいても一番重要なのは“言わずもがな”です。一方で、映画を世に届ける協力をあおぐメディア関係者達も、「パートナー」として気持ちをアゲる相手であり、無視できない存在といえます。

ジョニーデップ主演の最新作『ローン・レンジャー』(2013年8月公開)のジャパンプレミアでは、対メディア関係者に向けて、ユニークな取り組みが行われました。




ジャパンプレミア開催前、全国のメディア関係者の下には、イベントの案内とともに、謎のボックスが届きました。






箱を開けてみると、中には映画の主役、アーミー・ハマー演じる正義のテキサスレンジャー=「ローン・レンジャー」が装着しているアイマスクと、ジョニーデップ演じる先住民族=「トント」の白塗りメイクが実践できる、手順シートが入っていました。

そしてジャパンプレミア当日、招待を受けた取材陣達は、皆ローン・レンジャーとトントのコスプレをしてイベントに臨んだのです。







イベントは、雨天にも関わらず計2000名の来場者が訪れ、六本木ヒルズアリーナとその周辺を大いに涌かせました。こうした、取材陣だけでも数百人が集まるレッドカーペットイベントでは、来日するジョニー・デップなど、ハリウッドスターからコメントを貰うのは至難の業です。主要キー局を除いては、かなり望み薄と言えるでしょう。

全国各地から集う取材陣からすれば、こうしたコスプレを見にまとい目立った方が、来日キャストの注意を引いて、インタビューを獲得し易い”というメリットがあります。

また、配給会社側にしても、キャラクタープロモーションとしてお祭り感の醸成や、来日キャストのモチベーションをアゲるといった狙いがあり、運営側とメディア、双方が一つとなってイベントを盛り上げた好例と言えるでしょう




面白い!と思った事例はありましたでしょうか。私事ではありますが、今年のはじめ頃からこれまでの音楽領域に加え、映画とストアマーケティング(リアル店舗への集客施策)も考えるようになり、日々試行錯誤しながら、楽しく仕事をさせてもらっています。

以降は、音楽・映画・店舗マーケティングの事例はじめ、いろんなネタ備忘録していきたいと思います。(※写真は千葉に散歩しに行ったときに撮った無人駅です。とってもあじのある良い駅でした。)

以上、『仕掛けた相手の気持ちを「アゲる」ユニークな映画プロモーション3選』でした。最後迄ご覧頂き、ありがとうございます。