2015年8月23日日曜日

映像配信の巨人、進撃のネットフリックス。



http://www.real.com/resources/wp-content/uploads/2013/03/video-on-demand.jpg

VOD(ビデオ・オン・デマンド)という言葉があります。映画やドラマ、アニメなどを有料視聴する方法として、日本でも「itune」「Amazon」「Youtube」「Hulu」「U-NEX」「dビデオ」等のサービスを利用して、PCやスマホから好きなときに好きな作品を視聴するスタイルが定着してきてますね。

http://wowow-i.jp/v20110531/img_news/primary/default/1183.jpg

日本でも成長市場であり、色んな事業者が色んなことをやっているカオスなこの分野に、今年春頃、米国ビデオ・オン・デマンド最大手のネットフリックスが遂に上陸してくるというニュースが流れ、業界内でも話題となりました。


https://www.netflix.com/jp/

サービス開始は9月2日、間もなくとなります。いつもは仕事柄、映画宣伝の話が多いのですが、実はその辺りとも無関係ではなかったり。今回は日本におけるビデオ・オン・デマンドとネットフリックス上陸について、備忘録も兼ねてまとめ書きしたいと思います。


●もくじ
①日本のビデオ・オン・デマンド
②業界最強ネットフリックスって?
③検索不要?高精度のレコメンド
④オリジナルコンテンツ制作の意欲
⑤日本の映像制作が変わる?

まず、ネットフリックスが参入してくる、現在の日本のビデオ・オン・デマンド市場はそもそもどんな状況か。



①日本のビデオ・オン・デマンド

http://bmbb.jp/2014/04/vod/

当ブログをご覧の方で、既にいずれかのビデオ・オン・デマンドサービスを利用されている方も多いのではないでしょうか?数年前まで有料動画配信となると、提供されるコンテンツはアニメや韓国ドラマなんかが主流で、好きな人向けけ、ニッチな利用イメージが強かったかもしれません。

それが次第にスマホやタブレットが普及し、通信テクノロジーも発達すると、僕たちのインターネットによる動画接触時間が増え、ビデオ・オン・デマンドもサービスを拡充していきます。

扱われるコンテンツも邦・洋メジャー映画やドラマがどんどん増えてきましたね。

hulu上陸以降は、定額制サービスも一般利用が進み、“誰でも使うサービス”というムードが醸成されてきています。

しかし、認知度が高まる一方で、この手のサービスが一度も利用したことがないという人も多く、利用層と非利用層の溝が深い、これから感もたっぷりな業界と言えます。

http://hikaku-site.up.n.seesaa.net/hikaku-site/image/E59BB31.png?d=a613564

僕たちがビデオ・オン・デマンドと呼ばれるサービスの利用で、課金するパターンは大きく分けて2つ、都度課金と定額料金で見放題のサブスクリプション課金です。

図で見ると、ItuneStoreが都度課金特化、Huluは定額特化、TSUTAYAとU-NEXTがその間を取るようなイメージですね。また、一覧図の中にはありませんが、国内ではd-tv(旧dビデオ)がhuluと並び人気です。以下、簡単に比較です。


●Hulu



月額料金933円(税抜き)
動画本数約1万本以上
ジャンル洋画/邦画/アジア映画/海外ドラマ/国内ドラマ/アジアドラマ/アニメ/キッズ/ドキュメンタリー
無料期間2週間の無料トライアル期間あり




●d-TV


月額料金500円(税抜き)
動画本数約12万本以上
ジャンル洋画/邦画/アジア映画/海外ドラマ/国内ドラマ/アジアドラマ/アニメ/音楽/BeeTV
無料期間31日間の無料トライアル期間あり



これらのサービスが群雄割拠する動画配信市場は、この数年でみるみる拡大しています。(下記図のオレンジ部分が該当)


※引用)ミルビィブログ 有料課金動画配信を知る、始めてみる Part5〜市場編2014年版〜

少し古いデータですが、デジタルコンテンツ協会の発表によると、2013年の動画配信市場は約1230億円で、前年比121%。DVD&BDのセルの割合が伸び悩む中で、順調にパイを増やしています。

2018年迄には、1981億円まで成長するとされており、セル&レンタルと同規模の市場となることが予想され、パッケージ低迷の中、ビデオ・オン・デマンドには、映像市場という大きな文脈で、今後の屋台骨としての期待が寄せられています。

余談ですが、映画(興行)の市場規模はこの数年変わらず2000億円程度なので、セル2400億、レンタル2184億、動画配信1230億、主要どころで年間8000億とかが、お金を払って映像を見る市場のざっくりな規模感となります。

この映像市場(配信市場)に鳴り物入りでやってくる、ネットフリックスとはどんなサービスなのでしょうか。


②業界最強ネットフリックスって?

http://antyweb.pl/netflix-wzial-sie-za-pelnometrazowe-filmy-i-ma-szanse-podbic-kina/

ビデオ・オン・デマンドの巨人と称されるネットフリックス。本国では4000万を超える加入者、全世界で50カ国以上、6000万超ユーザーを抱え、その全てが有料利用者という業界最大手となります。


http://www.panoramaaudiovisual.com/wp-content/uploads/2014/12/Reed-Hastings.jpg
創業者:ヘイスティング氏

日本での知名度は、まだそれ程高くありませんが、アメリカではブロードバンド接続を持つ家庭ならば殆どが利用し、現在アメリカのインターネットトラフィックの半分が、ネットフリックスとユーチューブだと言われるほど(サンドヴァイン調べ)。

実は、既に日本でサービスを開始しているhuluやドコモのdビデオは、ネットフリックスを手本にサービスを作っています。そんな本家が、日本に上陸しようとしているわけです。

http://marketing.crevo.jp/column/netflix-data-and-history/

ネットフリックスが配信する作品は、ハリウッド作品の配信はもちろん、独自制作のドキュメントやドラマ、映画といった映像作品も配信しているのが特徴。

国内Huluが、ドラマ中心に約1万作品を提供し月額933円(税抜)。
dTVは、約12万作品を提供しながら月額500円。

そうしたなか、ネットフリックスは映画が5万作品以上、ドラマ他で1,500作品以上というポテンシャル。そして8月24日、遂に日本での料金体系を発表しました。

参考:http://mediaborder.publishers.fm/article/9179/


他サービスと比較してみると、こんな感じです。


参考:http://mediaborder.publishers.fm/article/9179/


このように、ベーシックはdTVより高く、スタンダードはhuluとほぼ同じ、プレミアムはU-NEXTより安い感じ。やはり視野にはdTV、huluを競合として捉えていそうですね。個人的には、良心的な料金設定な気がします。

とはいえ、金額だけでは今イチ、サービスの違いが見えてこない、という方も多いかと。以下は、ネットフリックスが注目される、2つの大きな価値について。


③検索不要?高精度のレコメンド機能



ネットフリックスの価値は、ある2点に集約されます。そのうちの一つが高精度のレコメンドに代表される、テクノロジー。派手さはありませんが、まさしくネットフリックスがプロダクト・イノベーティブであるポイント。

本当かどうか疑いたくなる数字ですが、本国で4,000万を超えるユーザーの全視聴において、実に75%がオススメ機能から動画を観ているとのこと。驚くべき数字です。

例えば僕が◎◎観たいな〜。検索、検索・・・という前にあれ、オススメ欄にあるじゃん!さらには、あ、けどこっちのが観たかったんだ!視聴、視聴…となるわけです。

ネットフリックスは、膨大な数の作品からメタデータを作成、それに沿綿密に分類。その上で、ユーザーがどんな動きをしたか、どの作品を視聴したか、しなかったかを詳細に分析。「このユーザーにはこの作品がオススメ!」を導き出すアルゴリズムの開発に成功しています。

日本のネットフリックスも、立ち上がりの時点で社員の50%がエンジニアで構成されているそうで、技術面に強い自信を持っているそうです。レコメンドの精度もどれほどのものなのか、早く僕もサービス利用し、確かめてみたいところ。



④オリジナルコンテンツ制作への意欲とクオリティ


ネットフリックスのもう一つの大きな価値は、オリジナルコンテンツの制作です。ドラマ『ハウス・オブ・カード』はイギリス原作のTVドラマ『野望の階段』のリメイク。この主人公が語りかけてくるちょっとメタなスタイルも、原作ドラマからの踏襲だそう。

物語は、ホワイトハウス入りの夢を潰された政治家フランシスの壮絶な報復を描くもので、巧妙な駆け引きや男女の欲望が複雑に絡み合うドロドロのストーリーが人気です。

監督は、デヴィッド・フィンチャー(『セブン』『ファイトクラブ』『ソーシャルネットワーク』『ゴーン・ガール』)。主演はケビン・スペイシー(『セブン』『アメリカン・ビューティー』)と豪華な組み合わせ。

僕もフィンチャー作品は大好きで、映画フォロワー・フィンチャーフォロワーはニヤリとする場面が節々にあり、作品自体とても面白いです。この『ハウス・オブ・カード』、ネットフリックスが約100億円(2シーズン分)という破格のスケールで制作したというのですから、驚きです。


(c) Netflix. All Rights Reserved.

(c) Netflix. All Rights Reserved.

(c) Netflix. All Rights Reserved.

さらに『マトリックス』『ジュピター』のウォシャウスキー姉弟が監督を務める『センス 8』は既に本国でネットフリックス制作のドラマとして人気を博し、『アベンジャーズ』や『アイアンマン』のマーベル原作『Daredevil (原題)』ドラマ版制作も気になるところ。

この他、ネットフリックスはIMAX映画の製作に着手しており、今後ネットフリックス上と一部のIMAXシアターだけで封切ると発表しています。

ネットフリックスは「総制作費数百億とかしちゃうような超ビッグバジェットムービーを、名監督つけて、すげークオリティでつくるぜ!(つくれるぜ!)」と言っており、事実そのスキームが出来上がっています。

中でも『ハウス・オブ・カード』はテレビ界のアカデミー賞とも言われるエミー賞3部門受賞、ゴールデングローブ賞を受賞。目に見える形での“大成功”を収めました。

そしてこの成功には、ネットフリックス第一の価値であるテクノロジーをバックボーンとした“データドリブン”が大きく関係しています。

http://blogs.itmedia.co.jp/serial/2014/06/5netflix1---d0fa.html
ハリウッドのドラマ作りを根本から変えるとまで言われる『ハウス・オブ・カード』の成功

・いつ(日付/曜日/時間)
・どこで(郵便番号)どんなコンテンツが見られているのか
・どのデバイス(TV/PC/スマホ/タブレット)で
・どんな人(年齢/性別)が
・どんなコンテンツにアクセスしているのか
・停止、巻き戻し、早送りポイント
・どこで止めて、どこで離脱するのか
・ビデオ検索(1日に300万回)、ビデオ選択の行動、ビデオ評価などの記録
・動画の中のスクリーンショットでユーザーが好む/嫌う色、シーン、ボリュームなど

ネットフリックスが活用できるデータとして、上記のようなものがあるそうです。そして、オリジナルコンテンツの制作を検討していたネットフリックスは、データの分析によって、以下のポイントの見える化に成功しました。


http://matome.naver.jp/odai/2141889544479963501
デビッド・フィンチャー監督

●ユーザーの嗜好分析から
→ユーザーの多くが、デヴィット・フィンチャー監督の『ソーシャルネットワーク』を最初から最後まで見ていた。

→ 原作版「ハウス・オブ・カード」がよく見られていたこと。原作版を見ていたユーザーが、デヴィッド・フィンチャー監督作品、もしくはケヴィン・スペイシー出演作品をよく見ていた。

→さらに、ユーザーの傾向に合わせて予告を10種類近く制作。


→デヴィッド・フィンチャー監督作品をよく見ている人には、フィンチャー感あふれる予告映像を配信。

→ケビン・スペイシー出演作品をよく見ている人には、彼を中心にした映像を配信。

→女性が登場人物の映画やドラマをよく見ている人には、出演女優にフィーチャーした映像を配信。


(c) Netflix. All Rights Reserved.

●映像の離脱傾向から
→通常アメリカのドラマは第1話を制作し、その反響を見て制作の継続を判断するところ、2シーズン分の制作(100億円)を発注。1シーズン全13話を一気にリリースすることで、ユーザーを1週間待たせるのではなく、続けての視聴を促進を図りました。

参考:データドリブンで制作された大ヒットドラマ「House of Cards」、何がデータドリブンなのか調べてみた/Be Magnetic! 


上記の通り、『ハウス・オブ・カード』は企画/製作/プロモーション/リテンション(顧客維持)と、とってもグロースハック的なアプローチで作られた商品といえます。(※これはトラディショナルなテレビがもっとも苦手とするところ)

言うは易しですが、実際にこのデータの土台があったとして、100億円を先行投資するというネットフリックス、その情熱たるや計り知れません。

そんな彼らのオリジナルコンテンツ制作の意欲はとどまる事を知らず、既にアメリカのウォール・ストリート・ジャーナルが発表していますが、任天堂と組んで人気ゲーム「ゼルダの伝説」実写版を制作するそうで、制作費100億円(?)のゼルダ、今から期待大です。


⑤ネットフリックスで日本の映像制作が変わる?

インターナショナルでは、さらなる名匠・名スタジオと手を組み、ラインナップを充実させつつあるネットフリックス。もうお分かりの通り、彼らはものづくりのモチベーションが非常に高く、確かなテクノロジーがあり、ハリウッド級のお金があります。

そのネットフリックスの日本上陸で期待するのは、やはり日本オリジナル/ローカルコンテンツの制作です。ここがめちゃくちゃ気になります。

日本の映像市場は、邦>洋ニーズ、とてもローカル愛が強いマーケット。ネットフリックスも日本でのサービスを開始させる上で、まず国内需要対策として、フジテレビと共同で制作される、『テラスハウス』新シーズン、ランジェリー業界の裏側を描く桐谷美玲主演のドラマ『アンダーウェア』など、日本オリジナルのコンテンツ制作を発表しています。



一方で僕が気になるのは、対海外向けの日本コンテンツ制作。

ハリウッド映画のようなビッグバジェットを持てない日本が、ネットフリックスと映画制作・ドラマ・アニメ制作で上手く融合できれば、今後の日本の映像制作は、これまで進むことができなかったステージに到達できるかもしれません。

http://livedoor.blogimg.jp/scandalsoku/imgs/8/0/80ae51cf.jpg

僕と同じよう邦画『進撃の巨人』で最高に残酷でシュールな4DX劇場体験するような人も、もう出なく済むかもしれないのです(※あくまで個人の感想)。

予算組・製作座組…その映画を“本当に作れるチーム”が、これまでに無かった最適な形で編成される、ネットフリックスはそんな国内の映画づくりの、きっかけとなる可能性があります。

実際に、今後の日本でのオリジナルコンテンツ制作を、ネットフリックス本体がどのように考えているのか。以下ガジェット通信の、日本法人社長ピーターズ氏へのインタビュー記事を引用させて頂きます。



――グローバルに展開しているサービスにおいて、日本市場はどのような役割を担っているのでしょうか。

ピーターズ氏:ユーザーの獲得はもちろん、クリエーター側に期待することは大きいです。日本には(映像コンテンツの原作となりうる)素晴らしいストーリーがたくさん存在します。

しかし、これまでは何らかの理由でストリーミングできるような作品としては作られてこなかった、あるいは海外で観ることができなかったものが多くあります。日本のクリエーターと協力して、世界に日本のコンテンツを届けていく役割は大きいと感じています。


――優れた原作がある一方で、映像化する技術は米国の方が上だという見方もありますよね。

ピーターズ氏:原作のアイデアが豊富にあるというのは非常にクリエイティブなことです。満足のいく映像化を実現できる技術を持ったクリエーターが足りていないのであれば、10年、20年という長いスパンで成長させてくことも必要でしょう。

世界のクリエーターたちを日本のクリエーターたちと交流させることでお互いに学び合うことがあるなら、我々がそのキッカケを作ることもできるかもしれません。

引用:http://getnews.jp/archives/1077573

勿論、立ち上がってすぐにことではありません。時間をかけるという前提で、ネットフリックスというインフラで、需要と供給の整合が取れれば、日本のコンテンツが最高のクオリティで海外に輸出されていくチャンスがあります。全世界に6000万人もの視聴者がいるプラットフォームで、日本発のコンテンツをアピールすることができるわけです。

若いクリエイターがコンテンツ制作の分野で、日本からアメリカン・ドリームを体験することも、決して無い話ではありません。

とはいえ、映画もアニメも放送局の出資としがらみが大きい日本。日本の放送局にとって、ネットフリックスが日本国内で支持を得て行く事は、自分達の未来の市場を侵される〜ということにもつながり、交通整理に時間はかかると思われます。

まずはHulu的な根付き方になるかとは思いますが、日本というマーケットにどうフィットしていくのか、9月2日のサービス開始が楽しみです。

※8月24日(月)料金発表を受けて更新

2015年1月12日月曜日

【大ヒット】思ってたのと違う!けど面白い、映画『ベイマックス』

(C) 2014 Disney. All Rights Reserved.

映画「ベイマックス」が非常に好調です。昨年12月20日(土)の公開後、週末2日間で興行収入6億超という、ディズニーアニメーションではアナ雪に次ぐ好スタートを切っています。

「妖怪ウォッチ』と公開が重なり、動員・興収とも2週連続の2位に甘んじていたものの、公開3週目に1位に浮上。3週目週末の2日間で動員50万5074人、興収6億6541万4100円をあげ、前週動員比129.9%と、1週目の約46万人をも上回る強い興業を見せています。


〜参考:アナ雪の週別の興業成績〜

1週目(金土日)9億8000万
2週目(土日)8億7226万9400円
3週目(土日)8億8100万円
4週目(土日)8億5091万1950円
5週目(土日)8億4025万8550円
6週目(土日)8億2678万1000円


日本の歴代興業収入第3位のアナ雪ほどではありませんが、ベイマックスも大ヒット作品特有の「落ちない興業」を続けています。前回のブログでは、最終50億は視野に入れた好発進〜と書きましたが、現在それ以上のペースで数字を上げており、最終はおそらく70〜75億達成するでしょう。

洋画実写で20億超えれば大ヒット。最近は邦画も伸び悩み、フランチャイズ作品だけが勝ちやすい現在の映画マーケット。こちらも以前ブログで記述しましたが、以下とてもざっくりと、興業成績ごとの「凄さ感」です。


〜参考:そもそも興行収入100億ってどのくらい凄いの?〜

20億=すごい!
40億=かなりすごい!
60億=めちゃくちゃすごい!
80億=やばい!
100億=お祭り!


そしてこちらもご参考まで、過去の7年のディズ二ー(ピクサー)作品の最終興収です。過去作を遡っても「ベイマックス」がいかにヒットしているか、伺えますね。

ウォーリー(2008年)         最終40億
カールじいさんの空飛ぶ家(2009年)  最終50億
トイ・ストーリー3(2010年)     最終108億
塔の上のラプンツェル(2011年)    最終25.6億円
カーズ2(2011年)          最終30億
シュガーラッシュ(2013年)      最終30億
モンスターズ・ユニバーシティ(2013年)最終89億


「ベイマックス」の大ヒットには、様々な要因が挙げられますが、特に今作は「ソーシャルメディア上のバズ」と「その内容」が、連日の動員に寄与しています。以下は「べイマックス」のソーシャルメディア上における言及数です。(※比較対象「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」14年9月)


※映画「ベイマックス」の言及数


映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の言及数

比べると「ベイマックス」が、公開後も継続的に人々の間で話題となり、高い言及数を維持していることが分かります。

これは、決して比較対象の「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」が言及されていない、ヒットしていない〜というわけではありません。映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」は、実写洋画にして最終10億越えのスマッシュヒットを記録してます。

ここで言いたいのは、ほとんどの作品が通常は初日を頭(山)に話題の数を落とすということです。そして、このように「公開後も継続して言及され続ける」ということが、映画をビッグヒットさせる上で最も重要なポイントとなります。

その点で映画「ベイマックス」は、鑑賞した人が皆口を揃え「予想していたのと違った、けど面白かった!」と、ソーシャルメディア上に感想を共有しています。


(C) 2014 Disney. All Rights Reserved.

参考)世界各国で異なる「ベイマックス」ポスター マーケティング手法の違いが顕著に(映画.com)

「ベイマックス」の日本での宣伝は、主人公ヒロとケアロボットのベイマックスの《絆》に焦点を当て、打ち出されました。しかし本編を観ると、意外にも『Mr.インクレティブル』的なアクション要素が目立ちます。

MARVELコミックス原案となる映画『ベイマックス(原題「BIG HERO 6」)』は、日本とインターナショナルとでは、かなり色の違った売り出し方をされています。


※映画「ベイマックス」の感情分析



人は気持ちが大きく動いたとき、感情のバランスが崩れたとき、それを誰かに伝えずにはいられません。「内容が思ってたのと違った。だけど映画が面白かった。たしかに感動した。」そういう意味で映画『ベイマックス』は、ユーザーに大いにインパクトを与え、そして“誰かに伝えたくなる”モデルケース的映画と言えます。

宣伝と本編のギャップ。実際に作品の中身がつまらなければ、ネガティブな口コミの原因となりますが「ベイマックス」の場合は【好き:6】【どちらでも:3】【嫌い:1】という具合に、非常にポジティブな言及が多いのが特徴です。

観客は、その予想していなかったアクション要素も含めた作品の面白さを、そして嘘偽りない感動体験を、ソーシャルメディア上で共有しています。

また、そうした《積極的》かつ《ポジティブ》な友人のお墨付きコメントは「どんな映画だろう?気になるな…」「ちょっと、観に行ってみようかなぁ…」と、普段劇場に行かない層も巻き込むことに繋がります。

配給側がどこまで確信犯で、こうした心理をついているかは定かではありません。また、圧倒的商品力があって、始めて成立する現象ではあります。しかし結果として、映画「ベイマックス」の日本におけるローカライズは大成功と言えるでしょう。

もし、まだ観ていないという方は、是非ご覧になってみて下さい。映画「ベイマックス」面白いです。