2016年5月28日土曜日

興収50億突破、『ズートピア』の確変が止まらない。



『アナと雪の女王』『ベイマックス』のディズニー最新作、人間のように暮らす動物たちの楽園を舞台にしたファンタジー・アドベンチャー『ズートピア』が、公開6週目を迎えるこの土日に興行収入50億円を突破する。


●GWコナンに出遅れたスタート
振り返れば、『ズートピア』は4/23の公開1週目も、翌2週目も『名探偵コナン/純黒の悪夢』(4/19公開)に大きく引き離され2位のスタートだった。ズートピアの成績が悪かったわけではない。今年のコナンの成績が異常だった。


ズートピアは初週で4.5億、2週目で5億と素晴らしいスタートを見せたが、コナンは初週で12億、2週目で6.8億と、近年希に見る圧倒的な興行で発進した。

毎年GWで好成績を上げ、年間映画ランキングTOP10も常連のコナンは、【シリーズ20作目】【黒ずくめの組織との対決】【コナン世代のパパ・ママ化】と、ヒットの要因も重なり、今年集大成的な盛り上がりを見せた。

その後も成績を維持し続け、公開7週目を迎えるこの土日で、興行収入60億に達しようかという成績だ。

一方、そのコナンの大ヒットを横目に、好成績ながらやや日陰気味にスタートした『ズートピア』だったが、3週目で初めて1位を獲得。 この辺りから、世の中のズートピアを見る目が変わりはじめた。


公開3週目以降も、動員・興収が落ちる気配がなく、むしろ4週目<5週目と前週越え続け、公開1週目以上に「今」の方が稼ぐという【確変状態】に、ズートピアが突入したからだ。


●確変突入のズートピア


〜ズートピア興業成績〜
1週目(土日)4億4580万4900円
2週目(土日)5億0969万9700円
3週目(土日)3億8700万円
4週目(土日)4億5893万800円
5週目(土日)5億407万3100円
6週目(土日)????????

通常、映画興行は公開初週末(土日)を観客動員・興行収入のピークとして、下降を辿る。翌週以降、それ以上の望みは無い。後はいかにホールドを良く保てるかが勝負となる。

しかし映画業界にはごく希に、『落ちない興行』という現象が起こる。そしてディズニー作品には、しばしばこの魔法がかかる。日本映画史歴代3位となった『アナと雪の女王』(最終255億)、15年映画ランキング2位となった『ベイマックス』(最終92億)がそうだった。




〜参考:アナ雪の週別の興業成績〜
1週目(金土日)9億8000万円
2週目(土日)8億7226万9400円
3週目(土日)8億8100万円
4週目(土日)8億5091万1950円
5週目(土日)8億4025万8550円
6週目(土日)8億2678万1000円

〜参考:ベイマックス週別の興業成績〜
1週目(土日)6億0041万0500円
2週目(土日)5億1497万0900円
3週目(土日)6億6541万4100
4週目(土日)5億4610万円
5週目(土日)4億2625万0100円
6週目(土日)3億5010万円


1週目から大ヒットし続けたアナ雪に比べて『ズートピア』は、1-2週目を『妖怪ウォッチ』に譲りながら3週目で1位を獲得した『ベイマックス』が見せた落ちない興行パターンに類似しているが、3週以降の動員・興行の『勢い』という点でズートピアはベイマックスを上回っている。

観客の足並みが落ちず、むしろ拡大していくこのようなパターンは、作品力とそれに紐づく鑑賞者のポジティブなクチコミをベースに、公開後のTVCM等追い宣伝がドライブし、初めて形成される。

若い10-20代からファミリーまで、満遍なく劇場へ足を運び、口コミと追宣伝により、やがてリピーターが出現し始める。望んで形となるものではないが、ディズニーがこれまで成功を収めてきた、理想とするヒットの軌道である。



うさぎの主人公ジュディと、キツネの相棒ニックのバディムービーとしての描き込み・愛くるしさ。行方不明事件の解決をベースとしたサスペンス脚本とコメディのバランス。人種問題や差別・偏見のメタファーとして動物達を描いた社会的テーマ、映画『ズートピア』は、一個のエンタテイメントとして驚くべきレベルで完成されている。

『塔の上のラプンツェル』のパイロン・ハワード、『シュガー・ラッシュ』のリッチ・ムーワの共同監督作品として、ディズニー社を代表する2人のクリエイターの持ち味がかけ算となった、素晴らしい傑作だ。

現在、コナンを猛スピードで追い上げ、そして公開6週目のこの土日にいよいよ50億を突破、その背中に張り付く。『確変状態』に入ったディズニー映画は、ここから先が強い。



※2016/5/31(火)更新
5/28(土)-29(日)の週末興業で動員32万4549人興収4億3867万1300円を記録。公開3週目以降、4週連続累計で1位、累計も動員421万人興収53億円突破と、未だ衰えを見せる気配はない。