2013年1月1日火曜日

【レコ大】服部氏「これが日本の音楽業界の現状です」の現状とは?




30日、TBSで放送された第54回レコ−ド大賞。受賞は2012年のオリコン年間ランキング第1位であるAKB48「真夏のSOUNDS GOOD!」となったわけですが、発表直前に服部克久 氏(日本作曲家協会会長・制定委員長)が発した一言がネットで物議をかもしました。

"日本作曲家協会会長・制定委員長の服部克久さんはレコード大賞で「これが日本の音楽業界の現状です。楽しんでいただけましたでしょうか」と発言。あまりにも意味深なこの発言はネットで波紋を呼んでいた。

中には暴言だ・皮肉だなど騒がれ、日本の音楽業界の現状をAKBの大賞受賞と重ねて発した言葉ではないかと物議を醸している。

振り返ってみれば今年はオリコンのランキングはAKBが独占するという異例の事態になっている。これを踏まえると大賞は文句なしの受賞ではあるが、作曲家である服部さんがこれに関し深く思う事もあるのかもしれない。”(引用)





CDセールスは握手券やハイタッチ券、ライブ招待券などのインセンティブにより大きくフォローアップされ、それは如実にオリコンに反映されています。服部氏の言うとおり、日本の音楽の"現状”がここには垣間見えます。しかし、これを過去の音楽産業の隆盛期との対比から「音楽が売れなくなった」「所詮握手券頼みか」と簡単に皮肉してしまうのは、如何なものでしょうか。

というのも、かつてオリコンがランキングにより示してくれた【人気】と、現在のオリコンが示す【人気】は、明らかに性質を違えており、この性質の違いの理解なく現状を皮肉することは、少々気が早いにように思います。そこで僕自身のアタマを整理する意味も込めて、本ブログを通じて、オリコン上位陣がAKB・ジャニーズで占拠されることの【意味】を、今一度考えてみたいと思います。




これまでオリコンはCDのセールス状況を、ただただシンプルに見える化してきました。それは今も変わらず、セールスの内実や過程は問われません。

そして音楽のデジタル化により、音源そのものに価値が発生しなくなった現在、1枚1000円近くもするCDはもはや当該アーティストのコアファンでなければ買ってはくれません。12mmのアナログディスクは、ファンとアーティストの関係値の深さを示す、エンゲージメントツールの一つとなっています。


これから言えることは、オリコン上位陣は昔のように、「皆で同じように聴く人気アーティストが名を連ねる場所」ではなく、「よりコアファンと親密で密接な関係を築いているアーティストが名を連ねる場所」へシフトした ということです。

オリコンが示す人気とは、その母数ではなく【人気の熱量】へと意味転換しているのです。この【母数→熱量】への変化こそ、“日本の音楽の現状”ではないでしょうか。



AKBにしろジャニーズにしろ、そのアーティストに対する圧倒的なファンのロイヤリティがランキングに大きな影響をもたらしています。そして、そのファンの熱量に消費し尽くされないほどの、膨大で圧倒的なコンテンツを、AKBとジャニーズは活動の中で生成し続けています。

成熟した日本の音楽業界が歩んだ先は、よりアーティストを「ジブンゴト化」したコアファンと【双方向】に【持続的】にコミュニケーションし続けていくこと。その手段が握手券、投票権、ライブ参加券であったりするのだと思います。

今後音楽マーケットが、そうした【熱量】がものいう形へと傾倒すれば、よりロイヤリティの高いコアファンを抱える声優系歌手なども、オリコン年間ランキングの上位に顔を出してくることも、十分あり得るかもしれません。いずれにせよ、これまでには見せなかった結果(変化)を、2013年以降、またオリコンは反映してくれるのではないでしょうか。

結果として、こうした熱量集団の列柱でマーケットが形成されるのだとしたら、これを簡単に皮肉してしまうのは考えものだなと、年末レコ大を観ながら書かせて頂きました。最後までご覧下さり、ありがとうございます。ご意見・ご感想など頂ければ幸いです。

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